Magician and Friends

 ある朝。家で普通に朝のニュースが始まるのを見ている。NHKなのに、何故か日テレのF澤アナウンサーが出てきて報じる。

「K市立S中学校(私の通ってる学校)付近で、大変な事件が発生しました!」

 な、なにいっ!? ってコトで、画面にのめり込む。S中生の女子生徒を狙った殺人らしい。朝になっても被害者がいそうな雰囲気だ。つまり、つまり、てるり〜もヤバイ! TVをじっと見ていると、時刻は7時36分だ。ちなみに、じゃがぁとだまどんとの待ち合わせタイムは、7時35分。じゃがぁの家まで、ダッシュで3分くらいだ。「うげ!」とか思って制服に着替える。
 いつもは着替えなどの用意に5分とかからないのに、戻ってくると50分を過ぎている。学校にも遅刻するかもしれないし、ひとりで行ったら余計に狙われるかもしれないけど、歩きの通学路はなんともなくて、学校に着くと生徒は全員体育館に集まっているとのことだった。
 急いで行ってみると、そこはS中の体育館ではなかった!(ぇ
 しかも、とんでもなく広いし(普通の体育館の3倍くらい
 どう考えてもS中生じゃない人(幼稚園が一緒だった人とか、見たことない人)とかいるし。ちなみに1・2年の姿は見えない。友達も、友達じゃない人も3年生以上しかいない。

 まあ、そんなことを気にしながらも、入り口に横に3つ並んだ下駄箱の先にひょいと顔を出すと、同じクラスのKさんとTさんがいた。

「時羽さん、おはよう。遅かったね」

 心配してくれていたようだ。

「うん、でも大丈夫」

 そう言うと二人は行ってしまう。ずっと向こうを見ると、じゃがぁが誰かと話している。でも、のんのんとあいさつしたら殺されかねないと思ったのか、(いや彼女が心配だったのよ)私はろろっけを捜した。


「みんなぁ、りょりょ、どこにいるかしってる?」
 そう言うと、すぐ近くにいた見知らぬ少年が指さしてくれた。

「あっち。前のほう」

 目立つと何だか嫌な雰囲気だから、ずるずると身体を引きずって移動する。しばらくすると、ろろっけの姿が視界にはいる。そのまま、ろろっけを見ながら動いていたら、少年と衝突してしまった。

 ひとりは、どこかカリスマ性のあるリーダー格。顔で言うと、ちょっと美形でよっしーに似てる。もうひとりは同じくいつも笑顔のおくちゃんに似てる。まあ何はともあれふたりと話していると、横から大人しそうな女の子がふたり(よく狙われなかったな)やってきた。
 そして話に加わったのはもうひとり。赤茶色のショートヘアの、とてもミステリアスでキレイな女性(カ○ドキャ○ターさ○らの容子さんそのまま)だ。6人で楽しく話してるうちに夜になる。そのまま床に転がって眠る。

 真夜中に目が覚めた。辺りは青黒いライトに包まれている。「何コレ」とか思って起き上がると、玄関の方で声がするので行ってみた。すると、今回の体育館企画のアタマらしき奴が、ひとりの男の首をぐうッ!としめていた。そこだけ蒼白い光で照らされている。その回りでは乱闘っぽい映像が闇に浮かんでいる。なのにとても静かで、アタマの男の声が響いている。

「やっと見つけたぜ…………」

 よっぽど恨んでいるらしく、めちゃ怒りがこもっている。見つかったらヤバそうなので、とっとと戻って寝る。そう言えばあの男、幼稚園が一緒だったTくんに似ているなあ。
 翌朝。玄関まわりにはたくさんの少年が血だらけでそこに倒れていた。みんな呆然とそれを見つめている。昨日のできごとを知っているのは私だけらしく、なんとなく嫌な気分だ。それでも、一日が始まる。

 私は窓(よく高い階の体育館についている、足もとのやつ)の外に目をやった。すぐ横に深いコンクリートの水路(今は水はない)。その向こうは、目の高さほどの手すりだ。さらに向こうには、深くに川がある。見えないけれど何故か知っている。私のまわりには例のよっしー、おくちゃん、女の子×2、容子さんがいる。

(外に……出たいね)

 口に出してはいけない雰囲気だ。なので心の中で思う。すると意識が飛んで、私たちの身体は手すりの上にあった。念願叶って外に出られたのだ。うれしくなる。
 かといって、川の方は見下ろすのも怖いほど切り立ったがけになっていて、水路は、飛び降りられる高さではあるけれど、一度降りたら上れそうにない。そのまま外につながっていればいい話だが。
 てなわけで、よっしーとおくちゃんが先に飛び降りる。

「てるりも降りてこいよ!」

 女の子ふたりはめちゃめちゃ恐がっているし、容子さんは全てを見届けているような感がある。

「えー……でも、外につながってないかも知れないよ」

「その時はその時だよなぁ」

「うん」

 先に降りたふたりがそう言うので、私も降りることにした。
 私が飛び降りてふと上を見た瞬間、何かがゆっくりと空を横切っているのに気づいた。
 「Weiβ」のペルシャが、翼をつけて空を飛んでるっぽい。容子さんがいないことがわかってもう一度空を見ると、容子さんがだんだんマンクス(ペルシャの部下)に姿を変えて、ペルシャと寄りそって飛んでいく(おいおい)。最高にうれしそうだ。思わず感動してしまう。
 そして、マンクスがこちらを見て微笑んだ。

 次の瞬間、私たちは見たことのない街にいた。日常生活という感じの、犬がいたり猫がいたりするごく普通の家並みが見える。すると、容子さんがテレポートして私たちの隣に立った。

「私は、私とペルシャの後継者を探しているの」

 その手には、小ぶりの魔術師っぽい杖が握られていた。

「行きましょう」

 彼女についていくと、ガレージに水を張った瓶がおいてある家の前に出た。勝手に入っていく。
 そして容子さんは、その何ともガーゴイルのような形の瓶に杖を立て、両手をかざした。甘い赤の光が杖からもれる。どうやら、それができればいいらしい。順番にやっていく。大人しそうな女の子たちは、ちょっと光らせることができたものの、一瞬だった。よっしーとおくちゃんは、銀色の光だった。ふたりともしっかり光ってた。私の番が来て、私は何故か目をつぶって杖に手をかざす。

「…………」

 手を離して顔を上げると、容子さんがにこにこ笑っていた。できたらしい。安心していると、家の中からラピュタのドーラおばさんみたいなごついおばちゃんがでてきて、私たちに「帰っておくれっ」と言って水をかける。全体的にみんな濡れる。それでも何故かうれしくて、みんなで笑いあいながら、街を歩いている。

 目が覚めると、体育館の中がやけにざわざわしていた。

(夢、か)

 でも、容子さんの姿が見えないところや、みんなが優しい目で私が起きるのを待っているところをみると、どうやら「友情がなす同じ現実の夢」を経験してしまっていたようだ。
 すると、近くにいたよっしーが私に教えてくれた。

「ドアが開くんだってよ」

 つまり、外に出られると言うことだ。
 しかし、だ。私は思い出した。
 去年も、一昨年も、私はここに来ている。そして何度も解放される喜びを味わっている。ドアが開くとそこには空が広がっていて、レンガ色の遊歩道が広がっていて……でも、外に出て少し歩いた瞬間、毎年、何かからだがしびれるような感じで、倒れていたのだ。
 その理由を思い出せないまま、ドアが開いた。体育館にいる人全員が群がる。ドアのまわりには企画者の取り巻きみたいな人が立っている。
 残っていても追い出されそうなので、とりあえずドアに向かう。

 外に一歩出ると、美味しい空気に心が弾む。足どりも弾む。てなワケで、スキップとかジャンプとかしながら進む。真横にガラの悪い兄ちゃんたち(ナスカの潮上含む)がいるのは気にしない。ぽーん、と彼らの頭を飛び越える……と。

「ぎゃあー!」

 後ろで、電気がばちばち言って、数人が倒れた。そしてすぐに消える。試しに歩道の手すりに触れてみると、痛くはないものの多少ばちばち言う。
 これで、去年までのトリックがわかった。あそこに、電気の通ったピアノ線か何かが張ってあったらしい。ほぼ全員が倒れているみたいで、前にはよっしーとおくちゃん以外、後ろには女の子ふたり以外誰もいない。
 ガラの悪い人々が後ろから追いかけてくるかとも思ったけれどそんなことはなく、5人は次々と張られた線を飛び越えて、外を目指す。

 ひたすら、ひたすら、みんなの背中を追いかけて。
2001年の初夢。
偶然「カードキャプターさくら」見ちゃったのが運のツキ。
果てしなく二次元に冒された物語が脳内で進行。
若さに免じて許して下さい。