Dearest Honey

死ぬことにしか希望を見出せない。
白いベッドの上で確かに彼女はそう言った。

生まれて初めて、女に手を上げかけた。

その時、気付いたんだ。

死にたいと思えばいつだって死ねるのに。
誰にもそれを止める権利なんかないのに。

出会ってしまったから。
俺の気持ちを、彼女は知っているから。
お互いの見つめる先が遠く離れていることはわかっていたのに。

伝えてしまったから。

俺が先に消えてしまえば。
彼女は何のためらいもなく逝けるのだろうか。

時間が過ぎるのを待つ。
黙って、寝息の響く静かな部屋を出た。

信じているのは、想いだけ。

未来も夢も眼中にないと、解っていた。

そんな彼女の支えに、未来に、夢に、俺はなりたかった。

もちろん、いつだって。



悲しむだろうな。
きっと、また泣くよな。
もしかしたら、今までで一番泣かせてしまうかもしれない。

でも、それが彼女の傷に輝きをもたらすならば。

真っ青な空と真っ赤な意識の中で、俺は瞳を閉じた。

何も見えない今、俺は誰よりも彼女を愛している。
笑顔だけが闇に溶けていく。


次の痛みで、きっと最期だ。
もう苦しむことはないよ。


なぁ、俺はお前の希望になれたかな?


病院もののドラマも、病弱って言葉も嫌い。
それに頼る人はもっと嫌い。
で、たまに欲しくなる、捧げたくなるこんな優しさ。
後を追う愛がないことを知りながら。